毎月の例会で、会員の有志がこけしを展示して、そのこけしにまつわる話を聞かせてくれます。



−平成20年11月− 
樋渡治一のこけし

(橋本 永興)
樋渡治一のこけしは鹿間時夫著「こけしの鑑賞」「こけし辞典」に掲載されているがこれ以上の解説文は他にはない。治一は明治39年生、大正8年高橋兵治郎につき木地を修業する。昭和7年治一名義で弟樋渡連治描彩のこけしを少量作り、その後漆器の蒔絵師の樋渡辰治郎に描彩を依頼して13年頃まで作った。

写真左端は樋渡治一木地、樋渡辰治郎描彩作と思われるこけし5寸・昭和10年頃の作。二重瞼で、端正な顔つきと、肩の張ったのが特長。特に戦前の物にしては木地の仕上げは丁寧である。

もう一方は治一木地で樋渡(大類)連治のこけしがある。頭が大きく横に張り、撫で肩が特徴。「鑑賞」にはラクピーこけしの由来の記述がある。写真右端は佐藤秀一5寸・昭和61年作。左端と同型のものの写しであろう。右2本目は三春文雄作平成20年6月作。三春さんの話では治一型製作の許可を秀一さんに取ったが、更に治一の実家のご子息さんにも戴いたという。あまり治一の古品はなく書物など見て、小寸は一重瞼で、7寸ぐらいは二重瞼の2種類を作る。

写真右3本目は高橋雄司作6寸・昭和60年作。雄司さんの話では、らっこコレクションの本にある父兵治郎の写真を見て作った。その本の解説で橋元四郎平氏はこの兵治郎こけしのロクロ線は治一こけしの原型になったのではないかと解説している。

 参考文献 こけし辞典、こけし鑑賞、らっこ。