毎月の例会で、会員の有志がこけしを展示して、そのこけしにまつわる話を聞かせてくれます。

2月例会ギャラリー

丑蔵と文男のこけし
(小川 一雄)
写真
例会におけるギャラリ−は、例会の頒布の合い間などを利用してこけしを見て頂くため、行っている。

最近は毎月中古や古品の入札、抽選などがあり、いささかその必要性も希薄となったが、それでも何がしかのテーマを持った展示は貴重なのではないだろうか。

さて、今回持参した佐藤丑蔵(写真右)は、昨年10月の例会で落札した8寸、63歳作である。昭和20年代のこけしの特徴は、胴やや太く、頭はやや丸味が出てきたが、立てて見て縦と横の関係がほぼ同じ位の寸法になっている。笑口であり、表情は湯田後期と続いているように思われる。丑蔵のこけしを多く紹介している書物に<愛こけし>があるが、このこけしのように菊の芯部分が黄地に青で3筆で描かれているのは見当たらない。私は丑蔵について時系列に集めているので、狙っていた数か月前の尺を逃した後、やっと入手することができた。もう少し後の時期のものを良しとする文献もあるが、こんな健康的なてらいのないこけしは評価したい。

写真左は佐藤文男の8寸で、昭和58年7月に小田急百貨店で開かれた「第1回日本伝統こけし展」で入手したものである。

当時のパンフレットによれば、大賞里見正博、優秀賞渡辺忠雄他9名に次いで、佳作20名の中に入っている。文助の弟子であった文男は、昭和43年以降丑蔵型に専心し、精力的に復元を行っていたが、このこけしは、形状、描彩から見て昭和20年代のこけしを初めて意図して作られたもののように思われた。2本のこけしを並べて見て、かなり違う味のこけしであることを認識させられた。