毎月の例会で、会員の有志がこけしを展示して、そのこけしにまつわる話を聞かせてくれます。



−9月− 大内慎二の弁之助型こけし
(村上 穆)
弁之助型こけし
右:西山憲一(昭和41年・20cm) 左:大内慎二(平成14年・24cm)
大内慎二さんは昭和32年5月10日の生れですから現在45歳です。大内一次さんには子供がなかったので、後継者として一番下の妹さん夫婦を夫婦養子として迎え、この妹さん夫婦の次男として生れたのが慎二さんです。従って、一次さんと慎二さんは、本当は伯父・甥の仲になるのですが、戸籍上は一次さんの孫ということになっています。

平成7年7月うつ病で入院、抗うつ剤の副作用で手指の振戦が続き、制作意欲も湧かず、とてもこけしを作れるような状態ではなかったということです。しかし療養の甲斐あって、ここ数か月は体調もかなりよくなり、意欲も出てこけしの制作を再開することになりました。

大内今朝吉さんのお店「松野屋」では、弁之助さんの三男・弥三郎さんが工人として働いたこともあり、当時弁之助さんのこけしも「松野屋」で売られていたということです。そういった関係もあって、西田峯吉氏らの研究によりますと、岳のこけしは西屋系列のこけしということになっています。西屋系列の血筋を引く西山憲一さんもはや82歳、現在のところ後継者はありません。この度憲一さんに弁之助・勝治型の復元を打診したところ、快諾がえられ、平成14年7月28日付で許可証をもらったということです。手始めに 『西田記念館』の企画展「土湯こけし・みなとやと西屋」に出品されていた、天江コレクションの弁之助8寸1分を復元し、8月18日復元初作10本が『西田記念館』に納品されて、窓口で販売されました。これはそのうちの1本です。ところが何とこのこけしが、鳴子の第48回「全国こけし祭り」で岩手県知事賞を受賞したのです。長いトンネルを抜けだした慎二さんにとって、今回の受賞はどんなにか励みになったことでしょう。