毎月の例会で、会員の有志がこけしを展示して、そのこけしにまつわる話を聞かせてくれます。



−10月− 丑蔵の晩年のこけし
(小川 一雄)
丑蔵81歳のこけし 左のこけしの表情
丑蔵のこけしのファンは多いだろう。丑蔵こけしの収集家として北川氏が知られているが、氏の膨大なこけしも戦後のものである。活動期間の長い丑蔵のこけしは変化が激しく、そのことがファンを惹きつけるのである。この例会ギャラリーで、私は既に2回丑蔵を登場させた。

さて、今回は最近入手した写真のこけし2本を紹介する。速筆で、勢いがあった丑蔵のこけしも歳とともに勢いは衰え、替わって枯れた味わいが魅力になっていた。80歳以降のこけしも以前は数多く持っていたが、今は数本を残して手放してしまっていた。

このこけしは、故佐藤茂氏所蔵品であった。底にフミロクロ作、丑蔵八十一歳とある。全部で5本あった。この頃は自挽きのものは少ないが、書き込みからしても、また底が挽き切りになっていること等から自挽きと判断した。なぜか、80過ぎの作であったからか、即売会では全て最後まで売れ残っており、帰り際5本のうち2本を選んで入手した。微笑んだこけしと怒ったようなこけし、こうして対比して見ると、なかなか楽しめるのである。作りつけのこけしは、太子型が殆どであるが、ウエストが高めなのも珍しい。こんなこけしが売れ残るなんて、中古の即売は私にとって魅力たっぷりだ。